「私の論文が『NEJM』に載ったときの話」の感想

 30, 2015 23:15
南江堂さんが「私の論文が『NEJM』に載ったときの話」無料で配布してくれています。
これ、すごくよい資料です。
南江堂さんありがとうございます!

「日本人による Original Articles が掲載された数は,過去 15 年間に 20 編程度です.」
(The New England Journal of Medicine 日本語アブストラクト監修者・北村 聖教授)

ってめっちゃ少なくない?

そのめっちゃ少ない実際のaccept体験談は、
どのような経路でNEJM掲載に至ったのか、またどのような部分でツッこまれるのか
を知ることができるので、非常に貴重です。

通過率自体かなり低いようであり(NEJM は 1/3 しか査読に回らないとも伺っていたので,cover letter や abstract にも推敲を重ね,私どもの論文の普遍的な意味合いを強調できるように心掛けました.投稿後,最初のレビューが返ってきたとき,reviseであったことに,1/10 に残った喜びより・・・(P13))、
他にも判定法に日本と欧米で差があるために併記を求められたり(「内視鏡的な萎縮度の判定」は欧米では全く知られていない判定法であるために,組織学的な萎縮度を併記すること(P13))、
統計解析の方法が問題となることがあったり(P13他)。

他にもいくつか抜粋。

・「外部の専門家として原稿の評価を依頼されたのは,緑茶の研究者だったと思われます.緑茶にがん予防の効果があると考えて研究をしている専門家にとって,私の論文が一流誌に掲載されると,自分たちの研究の妨げ(研究費の獲得の妨げ)になるのは明らかです.そのため,あまり本質的ではない部分で否定的なコメントを寄せて,原稿が受理されるのを防いだのではないかと推測しています」(P2)

同じ分野の研究者同士のツブし合いがヒドいw

まぁ、翻訳者同士もそういうとこあるけどな・・・
いや、医療分野に関しては、人数が少ないせいかそこまでヒドくはないですw

てか、reviewerって基本無償らしいですね。割合わなくない?

・「よくわが国では基礎研究は活発であるがその後の応用研究・非臨床試験の過程に深い Death Valley(死の谷)があり,seeds の発見が臨床に結び付かないという議論がある.最近 4 年間の日本の主要基礎研究および臨床研究論文数の世界での順位はそれぞれ 4 位および 25 位であり,・・・」(P19)

臨床論文少なくない?
実際に患者さんに直接すぐに役立つ可能性が高いのは、基礎研究より臨床論文の方だと思うんだけど。

そして「論文とは,一定の明快な問を呈示してそれに答えるもの」(P8)という名言が!
筆者も論文の翻訳中に、「で、結局何が言いたいの?」(結論ねーじゃん!)と思うことがある。

翻訳者の私としては(※医者でも研究者でもないただの文系)、
論文の医学的内容の是非や統計とかについてはお手伝いできないので、
せめて英語が悪くてrejectされるという事態を避けるくらいのものである。

全く直されないのは不可能だとしても(専門分野のネイティブが翻訳しても直されるようなので)、
英語面での著者の負荷を最小限に抑えるというのが、
筆者にできる仕事である。

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