千里ライフサイエンスセミナー:「エクソソーム研究の最前線:疾患のメカニズム解明から診断・治療まで」の感想

 16, 2016 22:14
本日は千里ライフサイエンスセミナー「エクソソーム研究の最前線:疾患のメカニズム解明から診断・治療まで」に行って参りました。
本日納期の案件があったのですが、意地でもエクソソームのセミナーに行きたかったので、
夜中1時までがんばって終わらせましたw

ちなみに第15回NanoSquare Cafeで講師をされていた中瀬氏は講演されませんでした。

セミナーは平日にもかかわらず大盛況で、
満席(3人掛けの間に空席なし)+後ろに補助椅子がズラリ。

定員の200名は優に超えてます。(300名近い?)

前回同様、まとめときます。
筆者の聞き違い・誤解・理解不足等による間違いがございましたら、ご指摘いただけると幸いです。

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①「はじめに」 by 落谷孝広氏(国立がん研究センター研究所・主任分野長)
出たーー!という感じ。
声が素敵。雰囲気はCharismatic。

エクソソームの教祖様って感じです。

②「エクソソームによる細胞間コミュニケーションの実態解明とがん治療への応用」 by 落谷 孝広氏(国立がん研究センター研究所・主任分野長)
落谷氏による講義。スライドのイラストがきれい。そのままNHKで放送できるクオリティ。
エクソソームの権威にもかかわらず、素人にもわかりやすい言葉で話してくださいました。
エクソソームを知る、診る、測る技術が遅れており、それらが最優先課題。
がん細胞は、自分の分身としてparticleを放出する。乳がんでは、正常細胞の100倍のparticleの分泌が見られた。
卵巣がんでは、エクソソームが取り込まれ、それによって外膜にアポトーシスが発生し、そこからがん細胞が侵入するそう。
また、慢性閉塞肺疾患(COPD)では、喫煙による刺激によって、気道上皮細胞にエクソソームが即、取り込まれるそう。
現在、がんの死因の90%はがんの転移によるものであり、エクソソームを制御することでがんの転移をブロックし、
がんと共存する道も開ける可能性がある。

③「細胞老化エクソソームとがん」 by 田原栄俊氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究院・教授)
エクソソームの中には、がん細胞を抑制するものもある。
田原氏は、若い細胞と老化した細胞のエクソソーム内のmicro RNAを比較し、老化した細胞では若い細胞の2~4倍(※発現比)のmicro RNAを数種類発見。それらは、細胞が老化すると、がんを抑制するためにenrichされるmicro RNAである。

老化した細胞は、がん細胞に対しエクソソームを放出し、
それに対抗してがん細胞も負けじとエクソソームを放出するらしいw
(最終的には老化した細胞が負けて消失)

マウスによる実験では、老化した細胞を1回treatするだけで、
腫瘍の大きさがなんと100分の1以下になった。
現在、田原氏は、4つのmicro RNA候補を臨床応用のために研究中。

④「腫瘍血管の特異性とエクソソーム」 by 樋田京子氏(北海道大学遺伝子病制御研究所・特任准教授)
樋田氏は血管生物学がご専門。腫瘍血管新生のメカニズムを調べていたところ、エクソソームに辿り着いた(落谷氏のところで、エクソソームの取り方を習ったとのこと)。

同氏の師は、
・血管新生が起こらなければ、がんは2~3mm以上大きくならないし、転移もしない
・腫瘍血管内皮細胞はがん治療薬のよい標的となる
と提唱した。

しかし、
腫瘍血管新生は、当初思われていたよりもかなりフクザツ
であった。

例えば、
・副作用
・コンパニオン診断薬がない
・薬剤耐性の出現

等。

抗VEGF剤は、虚血で低酸素になり過ぎると、逆にがんの浸潤・転移を増やしてしまう。また、投与の適切な時期を判断するマーカーもない。

低転移性腫瘍と高転移性腫瘍では、
染色体不安定性や薬剤耐性に違いが見られた。

同氏は両方の腫瘍からエクソソームを取り出し、micro RNAを調査したところ、
miR-HM薬剤耐性に関与していることがわかった。

⑤「エクソソームによる新たながん診断法の開発を目指して」 by 吉岡祐亮氏(国立がん研究センター研究所・研究員)
唯一若い研究員の方。エクソソームを探すことを「ウォーリーをさがせ!」に例えてらっしゃいました。

ウォーリーwww
懐かしすwww

同年代、ていうか略歴を拝見したところ、おそらく同い年だと思う。

同氏は、体液によってエクソソームを同定するExoScreen法を開発(エクソソームを204コ同定した)。

この方法の利点は、
・非侵襲的
・画像診断ではわからない特徴・性質がわかる
・大規模な設備がいらない

とのこと。

⑥「エクソソームを利用したドラッグデリバリー戦略の構築」 by 高倉喜信氏(京都大学大学院薬学研究科・教授)
エクソソームのDDS研究ということで、中瀬氏の研究と若干かぶっている。
同氏は、静脈内投与されたエクソソームは、マクロファージに取り込まれることで速やかに血中から消失することを見出した(→逆に言えば、マクロファージがなくなれば、エクソソームは残る)。
凝集体の少ない方が濾過滅菌後の回収率が高く、製剤利用に適していることを明らかとした(凝集体の少ないエクソソームは、超遠心によって密度勾配を利用した回収方法によって得られる)。
また、抗原とアジュバントを同時にデリバリーできる方法も研究中。

⑦「CD8+T細胞エクソソームによる癌の浸潤・転移の抑制」 by 珠玖洋氏(三重大学大学院医学系研究科・教授、兼複合的がん免疫療法研究センター・センター長)
珠玖氏は免疫療法がご専門。免疫の観点からのエクソソームの応用。
様々な細胞群や分子群は、免疫システムからがんを“守る”ことがあるが、逆にがんを“攻撃する”側に回そう、とする試み。
同氏は、CD8+キラーT細胞の産生するエクソソームが、間質組織の間葉系幹細胞(MSC)に多く取り込まれること、また、エクソソームを取り込んだMSCはアポトーシスを起こし、その結果がん細胞の浸潤・転移が抑制されることを見出した。
この働きは、エクソソーム中のmiRNAに大きく依存している。また同氏は、MSCを攻撃するmiRNAは、ヒトエクソソーム中にも存在することを見出し、現在それらを用いたがんの浸潤・転移抑制が可能な治療法の開発を検討している。

しかし、エクソソームの創薬化に向けて、様々な課題がある。
技術的な問題(エクソソームの大量・高純度の精製)や、試験(非臨床・臨床)のクリアなど。

同氏は、今から3年程度での臨床試験の実施を目標としている。

⑧「おわりに」 by 田原栄俊氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究院・教授)
クロージング。
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ちなみに昼食は、知り合い同士で業界井戸端会議www

次はワクチン、アジュバントか。

11月は、翻訳祭や、アイエム翻訳セミナー第2回にも参加予定なので、
イベントが多過ぎて全部は出られないので、検討します。

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