ケーキの欠片、あるいはなにか

 30, 2021 13:16
久しぶりに江国香織氏の『ウエハースの椅子』を読み直して触発されたので、
気分転換に軽い読み物を執筆しました。
(確定申告でメンタルやられてるので、その療養も兼ねて)
ケーキの欠片、あるいはなにか

※フィクションです
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年明けに、私は大阪の中心地に近い「パラディーゾ」という名のマンションに引っ越した。
(「パラディーゾ」とは、イタリア語で「天国」を意味する。)

南向きで、昼間はリビングに直射日光が差すので、
冬でも昼間は照明や暖房がいらないほどだ。

前のマンションから持ってきた植木も、ベランダで太陽の光を存分に浴びられて嬉しそうである。
(耐陰性の植物だが、本来日光が大好きな植物らしく、
前のマンションは北向きだったため、我慢していたのだろう。)

キッチンも充実している。
キッチンのシンクに食用ハーブの小さな鉢を置こう、と思う。
『彼』が来た時にお茶に入れたり、食事に入れたりできる。

リビングにはL字型の大きな白い本革ソファを置く予定だったが、
寸法を測ったところ、そのソファはこの部屋には大きすぎるようだ。
今度引っ越した時に買おう。
(リビングが20畳以上なら、部屋は「そのソファに」ふさわしい)

代わりに、同じシリーズのL字型ではない幅が少し狭いものを買った。
(輸入品なので、届くまで少し時間がかかる。)

ベランダでは薔薇を育てよう。
寝室の小瓶に一輪だけ生けよう。
ベランダは前のマンションに比べて狭いが、ガーデンテーブルとガーデンチェアをぎりぎり置けるため、
天気のいい日にはそこで食事やお茶をしたり、
夜にはシャンパンで乾杯することもできる。

白い本革ソファがくれば――彼はそこで私を抱くだろう。

私と『彼』の小さな「天国」。

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