
昨日、AAMTより、
長尾真先生がご逝去されたとのご連絡をいただきました。
私は長尾先生と関わっていたわけではなく、機械翻訳研究者でもないのですが、
喪失感を感じています。
長尾先生は日本の機械翻訳研究の第一人者であり、
日本の機械翻訳業界では天皇にも等しい存在であられたと思います。
長尾先生とは4年前、名古屋でMT Summit XVIが行われた際に少しだけ直接お話させていただきました。
私はどこの馬の骨ともわからない存在ですが、気さくにお話していただき、お名刺もいただきました。
私はどこの馬の骨ともわからない存在ですが、気さくにお話していただき、お名刺もいただきました。
私が翻訳者だと名乗り、機械翻訳の脅威について述べると、「機械翻訳を使って効率を上げていくしかないですね」とおっしゃっていたのが印象的でした。
長尾先生はルールベースが主流であった40年位前に用例翻訳を思い付かれておりましたが、
当時は計算機のパワーが低かったために、理論上のものにとどまっていました。
しかし、今はニューラル機械翻訳が台頭し、「教師データを学習させる」という観点で見ると、そのアイデアは用例翻訳に近いものとなっています。
今は計算機パワーが上がり、長尾先生のアイデアが実装に耐えうるものとなってきました。
ようやく時代が長尾先生に追いついた、と思います。
長尾先生がもし今現役でおられたら、おそらくシンギュラリティを起こしていたのではないでしょうか。
ようやくおもしろくなってきた時代に亡くなられ、惜しいです。
しかし、長尾先生のたくさんのお弟子さん達(いわゆる「長尾組」)が日本中の機械翻訳組織の長や重要な役職に就かれ、活躍されていますので、
長尾先生のご遺志は次世代に引き継がれたと思います。
研究者ではない私にできるのは機械翻訳の教師データ提供や、機械翻訳の評価の部分ですので、
微力ながらその部分で貢献していきたいと思います。
なお、故人のご遺志により、通夜並びに告別式は家族葬にて既に執り行われており、
ご香典・ご供花・ご弔電などは固くご辞退されるとのことです。
心よりお悔やみ申し上げます。
エッジ・トランスレーション
代表 三浦由起子
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